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ワイナリー便り

vol.71 2002/5



ぶどうの萌芽も例年になく早まりました。
史上最速の桜の開花を記録した2002年の春、4月も暖かい日が続き、上旬には初夏のような”暑い日”もありぶどうの萌芽も非常に早まりました。シャルドネは4/2頃、メルローは4/8頃、カベルネソービニオンは4/18頃に萌芽が始まりました。これは昨年に比べて10日程早いものです。ただし昨年も平年より1週間程早かったことを考えると、いかに今年の春が異常だったかがわかります。しかし、これが異常なのかははっきり言えないでしょう。炭酸ガスの排出が多いからか、オゾンホールが広がっているからかはわかりませんが、地球規模で気象の変化が急速に起こっていることが実感できるからです。遠い昔には氷河期などという時もあったのですから、何がおきても不思議ではないと思いますが、それにしてもたった数年にこんな大きな変化が起きるのは、やはり異常でしょうか。
中下旬には平年並みの気温の日もありましたが、暖かい陽気を経験してしまった体には少々寒く感じられ、人間の適応力に関心してしまいました。降水量は少な目で、気温が高かった割にはぶどうの生育もそれ程進んでいないようです。ぶどうの成長もこれからが本番。芽欠き(余分な芽を欠きとる作業)や病害虫防除などの作業がまっています。
シャルドネ(2002年4月6日) メルロー(2002年4月6日)
シャルドネ(2002年4月9日) メルロー(2002年4月9日)
シャルドネ(2002年4月15日) メルロー(2002年4月15日)
シャルドネ(2002年4月24日) メルロー(2002年4月24日) カベルネソービニオン(2002年4月24日)
Yukariの読むワイン
記録的な春もさすがに一息ついてくれたようですね。暖かい日と肌寒い日が交互にやってきて、花の見頃が長続きしていますが、風邪を引かれている方も多いのではないでしょうか。とはいえもう五月です、いよいよ畑の季節が始まります。どんな気候になってどんなブドウが実るか、心配でもあり楽しみでもあります。でもその前に、ビン詰めを終えなくっちゃいけません。もう一息!!

14 ボトリング

ビン詰め飲料の異物混入の問題が続発した時期がありました。微生物的な問題やまったくの”異物”は困りますが、ワインの場合澱や酒石も問題にされてしまうことがあります。フランスワインなら熟成の証として貴重がられるのに、国産ワインではクレーム、どうしてでしょうね。
ビン詰めはワインの将来を左右する非常に重要な工程です。同時にワインメーカーにとっては頭の痛い工程でもあります。今回は広く深いビン詰めについて、非常に簡単にまとめてみました。
14-1 ビン詰め方法の選択
ワインに限らず他の飲料も微生物適に安定な状態でビン詰めするためにいくつかの殺菌方法を採用しています。以下にワインで考えられるビン詰めの方法とその長短所をまとめてみます。
常温充填・無菌濾過
ワインでは最も一般的で品質への影響も少ない方法で世界中で採用されている。濾過やビン詰め機のコストがかかるのが欠点。
常温充填・フラッシュパスチュライズ 
瞬間的に高温に熱し、冷却したワインを常温で充填する方法。装置にコストがかかるため、あまり一般的ではない。
常温充填・ソルビン酸を添加 
非常に簡易な方法だが、微生物の活動を抑えるためには、相当量の添加物が必須。日本を含め多くの国ではソルビン酸の添加が認められていない。
常温充填・瓶殺菌 
いわゆる”ビン澗”小さな清酒蔵では時々見かけるが、ワインではほとんどない。比較的コストがかかり、品質の劣化も懸念される。
熱酒充填 
品質への影響は避けられないが、簡易で確実な殺菌方法。世界の他の国ではあまり見られないが日本ではかなり行われている。

14-2 ビン詰め工程
ワインのビン詰めは他の飲料の瓶詰めと同じくいくつかの工程より成り立っています。一般的には1.ビン内の汚れを取り除きリンスするリンサー、2.充填機、3.コルクを挿入するコルカー、さらに4.ラベラーと5.キャップシーラーまでがラインに入っているのが一般的です。キザンワインではラベルやキャップシールは無しでビン熟成にはいるので、1〜3までの工程がラインに入っています。

ビン詰め工程は、全てを手作業で行うラインから、すべて自動で高速で流れるラインまで様々です。効率の良いラインでは1,2人のオペレーターで1分間に数百本のビン詰めが可能です。ワイナリーの規模や製造するワインのスタイル、量によって適切なボトリングラインを選択することは非常に重要で、困難な事なのです。特に小さなワイナリーにとってはラインを維持管理することはコストのかかることです。カリフォルニアやオーストラリア、ヨーロッパの国々でも、委託ビン詰めが一般的です。タンクローリーでボトリング工場までワインを運んでビン詰めしてもらう方法に加えて、無菌濾過とリンサー以降のラインをトラックに積んでワイナリーをまわる移動ビン詰ラインもあります。

14-3 ビン詰め機
様々なメーカーで様々な方法のビン詰め機が作られています。特徴やメカニズムも10台10様なので一般論が書きにくいのですが、非常に大雑把に、グラビティー(重力)フィラー、カウンタープレッシャー(加圧)フィラー、バキューム(減圧)フィラーの3種類に分類できます。
14-3-1 まず 定量か定レベルか
ワインの瓶詰めはほとんどレベルフィラーです。”口から何センチのところまで”という設定で瓶詰めされます。その理由は、ガラスビンの重さと形状が決して均一ではないためで、実際720mlワインに相当する重さの液体を詰めてみると数ミリからひどいときは1センチ以上のレベルの違いが生じています。見かけの問題以上に、後で述べるヘッドスペースの圧力上昇の問題があるので、コルクから液面までの距離は一定である必要があります。一般的には規格の容量より少し多めに詰めることになりますが、多すぎるとコスト面で問題にもなるので、重要な問題です。レベルフィラーでも、ビン毎の微妙なレベルの違いを補正するのはなかなか困難で、大がかりなレベルメーターのついた機械もあります。
14-3-2 グラビティー(重力)フィラー
フィリングボール(待ちタンク)から重力でビン詰めノズルにワインを送る方法。ビンの口をノズルで密閉すると、送液穴からワインが入ると同時に空気穴から空気が待ちタンクへ押し出される。最終的にワインはノズルの空気穴の位置で止まる。簡易で安価な方法だが、ワインを送り込む時に常に空気と接するため酸化は免れない。さらにレベルを一定に保つのは困難。
14-3-3 カウンタープレッシャー(加圧)フィラー
待ちタンク内を不活性ガス(一般的には窒素ガスか二酸化炭素ガス)で決められた圧力で加圧しておき、常に一定の圧力でワインが供給されるフィラー。ビンの口をノズルで密閉し不活性ガスで加圧し、待ちタンクの圧力と同じになるとバルブが開いて重力でワインがビン内に入ってくる。ワインはノズルの排気穴の位置で止まる。さらにガス圧を利用してレベルを補正し、最後にビン内のガスを排出し常圧に戻す。
この方法では常に不活性ガスとワインが接しているため酸化は免れ、ビン詰めに先立ってビン内をガスで置換しておくことも可能である。一般的にレベル補正の機能が付いており、レベルも一定に保ちやすい。さらにスパークリングワインなどのガス入り飲料にも使用できるという利点がある。一方で不活性ガスを大量に使用する、ポンプなどの機械類は耐圧のものを使用しなければならない、製品内に必ずガスが混入するという欠点がある。さらに機械が高額で、メンテナンスもコストがかかるという欠点もある。
14-3-4 バキューム(減圧)フィラー
ビン内を減圧し、フィリングボール内の圧力と釣り合うまでワインを供給する方法。ビンの口を密閉し、決められた圧力まで減圧する。送液穴が開くとワインが待ちタンクから吸い込まれ、ボール内の圧力(常圧)とビン内の圧力が等しくなるとワインが止まる。ワインと入れ替わりに排気穴から空気が排出される。ワインのレベルは最初に設定したビンの減圧のレベルで決まる。
この方法では、非常に速いスピードでビン詰めが可能であり製品内には不活性ガスが混入しない。さらに通常の機械類が使用可能であり、メンテナンスも簡単で、機械のコスト、ランニングコストとも安価であるという利点がある。一方でスパークリングワインには使用不可能であり、フィリングボール内での酸化は免れない。さらにレベル補正のためには大がかりな装置が必要になるという問題点もある。

簡単なまとめになってしまいましたが、それぞれの方法には特徴があることがお分かり頂けたかと思います。新しい機械では、各々欠点を補う工夫がされており決定的な問題のあるビン詰め機など見あたりません。しかし、高性能になればなるほど機械自身の費用や維持管理にかかる費用と労力もかさみます。機山ワインのような小さなワイナリーではビン詰め機の稼働しているのは一年間にせいぜい40時間といったところなので、とても効率の悪い機械ということになっています。前回述べた無菌濾過も頭の痛い操作ですので、日本にも信頼できる委託ビン詰め業者が出来ればいいと考えているワインメーカーもきっと多いはずです。
次回はビン詰めの最終段階、コルクでの密栓についてまとめてみます。どうぞおつきあい下さい

この欄へのご意見を是非お寄せ下さい。またワインについての技術的な質問などありましたらYukariまで。  

奥野田葡萄酒の”おかみ”中村知子さんとの赤裸々なワイナリー裏話"ワイナリー若おかみのホームページ"も是非ご覧下さい。